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コーヒーと随筆 新装版

コーヒーによくあう、すこぶる面白い随筆24編

コーヒーと随筆 新装版
庄野雄治 編

ミルブックス
2022年11月10日発売
文庫版・320頁
定価 本体800円+税 
ISBN978-4-910215-11-2

カバーモデル 安藤裕子
写真 大沼ショージ
挿絵 木下綾乃


近代文学に造詣の深い、『コーヒーの絵本』の著者で徳島の人気焙煎所アアルトコーヒー庄野雄治が、コーヒーを飲みながら読んで欲しい随筆を厳選しました。大好評を博した『コーヒーと小説』の姉妹書、2冊続けて読むと何倍も楽しめる内容です。前作に続きカバー写真には、作品に登場する魅力的な女性の象徴として人気シンガーソングライター・安藤裕子さんを起用。現代に生きる私たちにこそ響く、至極面白く読みやすい随筆24編。長らく品切れしていた人気書が文庫サイズ、新たな4編を加えた増強新装版で復活! コーヒーを飲みながらお楽しみください。


「新しいものは古くなるが、いいものは古くならない。それを証明する随筆集」
人はずっと変わっていない。百年前の人が読んでも、百年後の人が読んでも、同じところで笑って、同じところで泣くんじゃないのかな。
コーヒーと一緒に、偉大な先達たちの真摯な言葉を楽しんでいただけると、望外の喜びだ。

◎掲載作品(掲載順)
「畜犬談」太宰治、「巴里のむす子へ」岡本かの子、「家庭料理の話」北大路魯山人、「隣りの犬」向田邦子、「立春の卵」中谷宇吉郎、「大阪の可能性」織田作之助、「陰翳礼讃」谷崎潤一郎、「人が住んでいる」永井龍男、「変な音」夏目漱石、「赤毛の犬、」阿部知二、「恋と神様」江戸川乱歩、「余が言文一致の由」二葉亭四迷、「日本の小僧」三遊亭円朝、「柿の実」林芙美子、「亡弟」中原中也、「佐竹の原へ大仏を拵えたはなし」高村光雲、「大仏の末路のあわれなはなし」高村光雲、「ピアノ」芥川龍之介、「人の首」高村光太郎、「好き友」佐藤春夫、「子猫」寺田寅彦、「太陽の言葉」島崎藤村、「硝子戸の中」夏目漱石、「不良少年とキリスト」坂口安吾


◎庄野雄治(しょうの・ゆうじ)
コーヒーロースター。1969年徳島県生まれ。大学卒業後、旅行会社に勤務。2004年に焙煎機を購入しコーヒーの焙煎を始める。2006年徳島市内に「アアルトコーヒー」を、2014年同じく徳島市内に「14g」を開店。主な著書に『融合ししないブレンド』『誰もいない場所を探している』『たぶん彼女は豆を挽く』『徳島のほんと』(福岡晃子との共著)『コーヒーの絵本』(平澤まりことの共著)、編書『コーヒーと小説』『コーヒーと随筆』『コーヒーと短編』、短編小説集『たとえ、ずっと、平行だとしても』がある。





 一番新しいものが一番優れていると思われている。もちろん新しくて優れているものもあるけれど、そうでないものもある。新しいものは、やがて古くなる。ずっと新しいままではいられない。新しいものは古くなるが、いいものは古くならない。この本に掲載されている随筆はすべて半世紀以上前、中には百年以上前に書かれたものもある。これらの作品が、それを証明している。
 生きにくい世の中である。自由で豊かな社会は、目標がある人には素晴らしいけれど、何をやっていいのかわからない人にとっては、これほど厄介なことはない。大半の人は後者、もちろん私もそうだ。人は何かを成し遂げなければならない、いつからそんなことになったのだろう。
 世界は言葉で溢れかえっている。言葉は平易になり読み易くなっているにもかかわらず、本を読む人は減っているらしい。それはたぶん、文章が平易で読み易いからだと思う。読んでいる時に詰まったり、引っ掛かったりする、すなわち思考する行為がない読書はつまらない。つまらないものからは、自然と離れてしまう。仕方がないことだ。
 知らない言葉に出会ったら、その意味を自らの手で調べる。そうして語彙を増やしていくことこそ、社会に参加することなんじゃないのかな。猫には猫という名前があるから猫なのだ。赤は赤、空は空、哀しみは哀しみ。たくさんの人と世界を共有するには、たくさんの言葉が必要だ。
 世界は言葉で出来ている。そのために、人は言葉を覚える。勉強じゃないし、お金儲けや偉くなるためじゃない。言葉は、生きにくい社会で生きていくための武器なのだ。この本には、生きにくい人生を生きた人たちの言葉が詰まっている。
 言葉のバトンを受け取ろうじゃありませんか。次の人たちに渡すためにね。(「はじめに」より」)



*サンクチュアリ・パブリッシング扱い