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シェイクスピア 金子一朗 2012/ 3月31日(土) 03:45
 実は、現代のグランドピアノ(モダンピアノ)でバッハ、ヘンデル、ラモー、クープランなどのバロック時代の作品を演奏することは、似たような現象を引き起こしている。これは、それらの作品が、現代のグランドピアノが存在しない頃に作曲されたことが原因である。バロック音楽をグランドピアノで演奏することは、よっぽど様式を正しく理解して演奏しない限り、コックニーでシェイクスピアの劇を演ずるのに等しい。しかも、面白いことに、これがモダンピアノの演奏家に気がつかれ、実際の演奏に活かされ始めたのは、まだ20年くらいしか歴史がないように思う。つまり、少なくとも、ぼくの世代から上の世代の人たちは、彼らが仮に音楽の専門機関でピアノを勉強してきたとしても、本来あるべき演奏スタイルをその頃に勉強していなかった可能性がある。だから、一昔前の名ピアニストの演奏するバロック時代の作品の演奏が、現代の標準からすると、とても違和感のある演奏であることが多い。実は、メンデルスゾーンが、19世紀前半に、長い間忘れ去られていたバッハの作品、特にマタイ受難曲を再演したのは有名な話であるが、いろいろな記録を読むと、どうやら、現代の最新の考古学的な考察に基づくバロック時代の作品の演奏様式とは相当かけ離れ、過度にロマンティック過ぎる演奏であったようである。その後、引き続き、19世紀後半のロマン派後期ではブゾーニなどがバッハの多くの作品をピアノソロ用に編曲しているが、私は、若い頃から様式としてどうしてもなじめない。それは、過度にロマンティックであり、響きが重厚過ぎるからである。モダンピアノの表現力を直接的に用いるとバロック時代の様式にあわなくなるのである。ぼくは、その感覚が、記憶をたどれば、中学の頃からあった。(続)

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