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三鬼 三島屋変調百物語四之続 5月15日(月)
Date: 2017-04-09

おすすめ度 ★★★★

宮部 みゆき  文芸春秋  発行:2016年12月

  おつぎ13歳は兄の一平がいる。兄は17歳。おつぎの父はお殿様の田んぼの小作人だ
おつぎはお化けを見たという話をおちかにする。
去年の夏死んだ兄のお嫁さんになるはずだったなっちゃんをみたのだ。
 立春の前の日に行灯祭りの時だった。神輿のように大きな灯籠みたいなものを作り、すり足で練り歩く。なかの油がこぼれないようにするためだ。その祭りはよそ者には見せない。今年は行灯祭りができない。そこで離れ家を使うことにした。
 離れ家は名主のご隠居様が半年ほど住んでいたところだ。家全体を灯籠にみたてて灯りをともすのだ。
準備が整い、行灯祭りにおつぎは絵師といっしょに離れ家に行った。障子戸のむこうに草原が広がっていた。おつぎは目を見張った。これがあの世か。なっちゃんがいた。
貫太郎の女房はお産が重くて死んだ。貫太郎の足元には赤子がはいはいしてまつわりつこうとしていた。死んだ人たちが目の前にいる。
 あの世に戻るための道中手形を石杖先生が描いていく。亡者に持たせるために。
離れ家は亡者の旅籠となっていたが、旅籠はたたむことになったと亡者に伝える。亡者たちは半分透き通るように見えた。惣太郎のおふくろさんもいた。おなつも一平に「いくな!」と叫ばれるが貫太郎のとりなしで、無事におなつも行ってしまった。
 最後に貫太郎も「この障子は向こう側からきっちりしめる」と消えた。離れ家は去年の行灯祭りのように最後は燃やされる。類焼することなく焼け落ちた。そして絵師も去った。

 次は清左衛門の話だ。三鬼という。
 筑紫の栗山藩の江戸家老村井清左衛門は藩主の死後跡継ぎなしということで取りつぶしになった貧しい藩だった。
 清左衛門には妹がいた。大柄で働き者だった。雪が降れば自ら雪かきをした。武家のお姫様のすることではないが、妹の志津は構わず働いた。ところが、この妹が3日ほどいなくなりまた戻って来たときは、辱めを受けて背中には牛女という切り傷までつけられていた。
 清左衛門は怒った。兄は村井家のために堪えろ怒るなという。やがて、犯人たち3人は自らの行いを自慢気に口にするようになった。
 3人の犯人を知った清左衛門はそのうちの一人を成敗するが残り2人は逃げた。
そのことで清左衛門は領内の北部山間の地にやられる。そこは上村と下村があり、村人の人数は増えもせず減りもしない。老人も子供もいない村であった。雪深い冬はきびしい。コメは年貢に取られ、3食を2食にして陸稲をつくり、炭焼きで暮らしを立てていた。ヒノキの植林もしていた。だが、もう30年も前から植林をしているが、夏は日照り、冬はなだれ、雨が降れば土砂の川、風が吹けば森がなぎ倒されるで村民の暮らしは楽ではない。
 逃げる者も死ぬものもいるが、減った人口は他所から領民を移動させていた。
 村には鬼がいるという。上村と下村は3里ほど離れているが、ほとんど行き来しない。村人は村中でとどまっている。村人は何かを恐れていた。
 下村には21人のうち女は9人、30年の間、赤子の生き延びずにいることが不思議だった。この村では10歳までの子は人と認めないので、人別帳に載せていないのだ。
 上村で11歳の千治と13歳の富一の兄弟がいた。8歳と10歳の時村に入って来たという。両親が小間物屋をしていたが、店先で酔払いともめ、番所に引っ張られた。酔払いの金貸しの一方的な作り話に両親は死罪になった。清左衛門はこの二人に城下の話などをして親しくした。
 兄の方が病気にかかり「城下から医者を・・・」と清左衛門が阿智上がるも、それは法でできないことであった。兄は何者かに逝かされる。黒い籠をかぶった蓑をまとった小柄な奴にやられた。
 赤子を産んで伏せていたみねも、成敗された。貴重なコメが二人の寝付きで母子のほかにその世話にかかりっきりのものまでが働かず、働けず、しかも養ってもらうことを必要としている。そういう者は村にはお荷物であったのだ。
 清左衛門はなだれに遇う。三日寝込んで起きた。村での無残な謎を直訴して村人たちはあちこちに送られた。
 千治は村井家に引き取ることはできなかったが、城下の小間物屋に奉公にあがった。
 妹志津は山で砲衛隊で清左衛門の力になってくれた須賀利三郎と夫婦になった。やがて志津に3人の子ができ、孫は7人となり、利三郎は砲術師として独り立ちした。
 清左衛門はおちかに話した後切腹した。三鬼とは・・・読んでからのお楽しみに。
反社会品 5月14日(日)
Date: 2017-03-20

おすすめ度 ★★★

久坂部 羊  角川書店  発行:2016年8月

  8篇の短篇
人間の屑
 心の病気とかで働かないやつは人間の屑だ!なんとむごい言葉、思いやりのかけらもない。みんな同じように思っているのだろう。
 こんな自分が嫌だ。自分という殻を打ち破りたい。いっそすべて消えてなくなればいいのに。妻は生活費を稼ぐのも、愛犬の世話も、ご近所の付き合いも親の介護もすべて任せてしまった。俺だってダメになりたくてなっているわけではない。恵まれた人間にはわからないだろう。
 俺は商業デザナーとして働いていた。コンペで賞もとった。その当時、うつ病の同僚に同情を感じなかった。はっきり言って見捨てていた。ところが、突然こめかみを金属バットでなぐられたような衝撃に襲われた。目の前が暗くなった。人間はこんな風に終わるのか。病院に運ばれた。くも膜下出血だった。それから一週間後、植物状態で生き残った。手足は動かない。目も開けられない。呼吸はできる。耳も聞こえている。そして15年。素晴らしい医療が目の前というが、いつになったら使えるのか。俺にような患者を治してみろ。口先ばかりで患者の治せない医者は末代まで祟ってやる。この俺こそが、正真正銘の人間の屑だ。

無脳児はバラ色の夢を見るのか?
 倉本真知子は妊娠十一週だが、赤ちゃんは脳が障害でロート症という。頭蓋骨は形成されるが、中の脳が作られない。無脳児として生まれるということを医師から告げられた。夫の哲哉も怒りのやり場がない。真知子はロート症の赤ちゃんを育てる親のブログもみた。無事に育つのだ。新聞社の取材も受け、真知子のことが新聞に載る。しかし、夫は産むとは思っていない。日に日にどうしていいか不安になって、時々赤ちゃんの声も聞こえる。「き・え・た・い」「うむな」「こ・ろ・す」 胎児の声はずっと聞こえる。そして真知子は胎児の心臓がうごいていないと告げられる。手術が終わった。死産だった。ところが胎児はロート症ではなかった。正常な赤ん坊だった。


沈黙法廷 5月14日(日)
Date: 2017-02-02

おすすめ度 ★★★★

佐々木 譲  新潮社  発行:2016年11月

高見沢弘志はフェリー乗り場で中川綾子を待っていたが来なかった。久里浜から千葉県金谷までのフェリーに乗るつもりだった。知り合って5か月。両親に会ってくれという頼みが負担になったのだろうか。綾子の勤務先に連絡するが、その会社は従業員は一人もいない。しかも寮もない。中川綾子という社員もいないということだった。
 東京北区岩淵で、馬場幸太郎は一人住まい。64歳だ。金物屋をやっていた。セールスマンが訪問した時、マッサージチェアですでに死んでいた。被害者の首に圧迫痕がある。ロープ状のもので絞めたと思われる他殺体だった。隣の家で聞くと、女性がよく訪ねて来ていたという。
 息子の馬場昌樹35歳から母親とは、昌樹が中学生のころ離婚したという。10年前に祖父母が弱ったので、この家に父親が戻ってきて金物屋を手伝っていた。祖父母の死後は一人暮らしだった。馬場は先週水曜日、不動産売買で手付金300万円を受け取っていた。馬場にはアパートやマンション、コインパーキングなどの収入があった。
 昌樹は離婚した母親と一緒に上目黒に暮らしている。父親はその後、西本タマミと結婚したが、すぐに離婚したという。
 昌樹は喫茶店を開こうとしていた。父親の方では親族の間で遺産相続のトラブルがあったようだ。幸太郎の家には、赤羽ベルサイユから女性がデリヘリ嬢の訪問を受けていた。ハウスキーパーで山本美紀が訪問していた。30歳の女性だ。板橋に住んでいるという。現金は家の中から全く見つかっていない。
 一年半ぐらい前に大宮で一人暮らしの男が殺された。大津孝夫69歳で、大津は浴室で溺死したと処理されていたが、死後半月して、娘から死亡からさかのぼって1年間に600万円が引き出されている。死亡の3日前にも120万引き出している。大津孝夫の家に出入りしていた家事代行業の山本美紀がいたという。
 山本美紀は2つの事件の被疑者となり逮捕された。高見沢弘志はニュースで見た山本美紀が中川綾子だと気づいた。
 矢田部完は山本美紀の弁護人だ。山本美紀は大津から40万借りたというが借用書がなかった。
 美紀は中学の時、同級だった山本裕太と結婚した。飲食店の従業員だった。子どもは一歳の時事故死した。離乳食をのどに詰まらせたのだ。それから夫婦仲が悪くなり3年ちょっとで離婚した。その後、裕太は飲酒運転で死亡した。
 美紀の家事代行業は2年前からやっている。馬場宅への訪問は中川綾子からの紹介だという。
 1年半ほど前、戸田市で熊倉典が荒川に入り自殺した。山本美紀に遺産を分けるという内容の遺言書を弟の幸夫が代筆したが、認められなくて美紀へ金が行くことはなかった。
 テレビは2年前に、山本美紀が中川綾子と名乗り、川崎市の一人暮らしの老人から300万円を引き出させていると報じた。
 しかし、山本美紀は無罪になった。疑いは残るが凶器のベルトのようなものは発見できず、現金も行方不明である。毎回傍聴していた弘志はその後、美紀に会い無罪を信じていたという。美紀は泣いた。
検察は無罪を不服として控訴する。
壁の男 5月14日(日)
Date: 2017-01-21

おすすめ度 ★★★★

貫井 徳郎  文芸春秋  発行:2016年10月

 宇都宮で乗り換え高羅駅で下車。駅員は一人だけいた。駅前には店はなく倉庫と民家だけだ。左に緑路を見ながら西に向かって歩くと徐々に民家が見えてくる。そしてふいに色が変わった。民家の壁や塀に原色の赤や青に黄色に緑といった色で人やキリンや車が描かれている。子供の落書きのような絵であった。いきなり現れた原色の一帯だ。
 フリーのノンフィクションライターの鈴木はこれを見に来た。絵を描いた伊苅は塾をやっていた。「子供たちが喜ぶので」というのが動機だった。最初は教室の中、そして外の塀、三軒先の川上さんの塀にも描いた。それは川上さんから頼まれたからだ。稚拙な絵というより単純化されたデザインと見ることもできた。基本は赤だった。
 絵は十軒以上に描かれている。伊苅本人が絵を描きたいと頼んだことはない。すべて依頼によるものだった。描いた本人に取材をするも、もう少し言葉を引き出せないかともどかしさを覚えた。
 伊苅の母は絵の教室をやっていた。塾は母の残したアトリエだった。アクリル絵の具でいきなり描き始めた。イメージのまま描いた。塾に通ってくる子の何人かも一緒に描いた。一か月で天井以外に白いところがなくなった。
 外塀はペンキで描くことにした。川上は「お前、頭がおかしくなったのか」と言った。「近所迷惑も考えろ」とも言った。
 川上の一人息子が車にはねられ死んだ。スーパーに買いものに行った時だった。ねこを追いかけて走り出したのだ。3歳だった。
 伊苅は外壁に男の子を描いた。そしてその絵の男の子を見た川上は「これ、充樹なのか」と聞いた。伊苅は「そうだ」と答えた。
 そして後日、「うちの壁に絵をかいてほしい。充樹の絵を」という。そして別の家からも絵の依頼があった。雑貨屋の山崎から水性ペンキと筆は山崎が用意した。女の子と像の絵を描いた。
 伊苅は近所の高齢者から組立式の家具の組立を頼まれる。喜ばれた上に五千円ももらえた。別の男性からはパソコンの操作でテレビ電話をしていたが、うっかりクリックして繋がらなくなったという。セキュリティソフトの相性のトラブルだった。一時間以上かかったが、繋がるようになった。一万円ももらった。五千円のつもりなので辞退したが一万円の価値がある仕事だと支払う側が強引だった。
 そのパソコンを直した高齢者から絵を描いてほしいと頼まれる。そしてその若夫婦の家も描いた。喫茶店を開くという者も絵を描いてくれるように依頼に来た。
 フリーライターの鈴木はなおも取材をつづけていた。そして伊苅にも子供がいたことを知る。小さい時に病死した。伊苅の人となりが徐々にわかってくる。
 絵を描いた地域は人が集まり始め、雑貨屋も自販機も町全体が活気づいてきた。

 
サーベル警視庁 5月14日(日)
Date: 2017-01-08

おすすめ度 ★★★

今野 敏  角川春樹事務所  発行:2016年12月
 
 明治38年7月、日露戦争の行方を見守っていた。
岡崎孝夫は米沢出身で警視庁の巡査だ。岡崎は巡査の仕事は楽ではないが気に入っていた。
 不忍池に死体が浮かんだという知らせで出かける。鳥居部長も現場に出向いていた。ホトケさんは服装から学者先生のようだ。
私立探偵の西小路臨三郎は伯爵の孫で帝大出身だ。西小路がホトケさんを見て帝大のドイツ文学の高島良造だという。発見者は富山の薬売りだった。
 高島は根津に住んでいて不忍池は通らない。通勤時には通らない湯島寄りだった。高島は生前、ドイツ語を公用語にすべきだと言っていた。その高島を討つべしと言った蔵田利則という学生がいた。
 岡崎と警部は蔵田を調べるが「拷問して自白させられるのが怖くて逃げた」という。そこへ陸軍大佐が殺されたと知らせが入る。麹町の屋敷町で被害者は事切れていた。本庄敬史郎だ。帰宅したところを胸を刺された。細くて鋭い刃物で。
 不忍池の死体は犯人が舟を使ったと思われる。二つとも胸に刺し傷が1つだけあった。傷は心臓に達していた。
 18歳の女子学生宅に行く。子女は学校の庶務のおじさんに送られて帰って来た。おじさんは藤田五郎翁で斎藤一のこと。西南の役で西郷軍と戦った。警視庁に勤めていた人物だ。
 署に同行し質問するも藤田は「存じません」という。一突きで殺された被害者たち。それができるのは「あなたならできるはず」というが知らないという。
 疑いが残るが藤田は心臓を突くのはもともと西洋人の考えだという。藤田も協力し葦名警部と捜査に向かう。
 三人目の被害者は狭間太郎という内務省の密偵だった。サーベルで殺された。 四人目は五十嵐大佐が殺された。
 山縣有朋率いる長州閥は新選組の斎藤一と面と向かって過去からの呪縛に苦しむだろうと。手打ちで事件は幕引きとなった。内務省は粛清が行われた。
 藤田が山縣に直接申し上げたことがあると言い「この国はご自分のものとお思いでしたら大間違いです」と告げたのだ。
 山縣は藤田が斎藤一だと気が付いたのだろう。
 この国は日本という国と日本人という国民は同じものだった。しかし、この先国民と国は別のものになっていくだろう。日本はこれから苦しみことになるだろう。
 長い歴史を捨て何もかも西洋風にしてしまうのは無茶な話だ。


コンテクスト・オブ・ザ・デット 5月14日(日)
Date: 2017-01-02

おすすめ度 ★★★

羽田 圭介  講談社  発行:2016年11月

 須賀は売れない作家と待ち合わせをしている。喫茶店の窓の下を見るとジーンズに白ポロシャツ姿の男がノロノロと歩いている。顔は青みがかっていた。渋谷のスクランブル交差点である。あいつはゾンビだ。ゾンビは女の子の手をつかんでいた。
 作家は24歳の時、自社主催の新人賞を受賞して今年で10年になる。経つにつれて枯れていった作家だ。
 Kは一昨日大和市で二体のゾンビを目撃した。ゾンビの本は本屋の棚にあふれていた。しかし、自分の本は置かれなくなっていた。作家デビュー10年だ。34歳で廃業か。
元個人事業主など雇ってくれるところもなく、治験のアルバイトでなんとか生活費を稼いでいた。文学賞受賞者桃咲カヲルが久々に新しい小説を発表した。今は30歳のはずだ。8年間小説を出していなかった。最新作は「三八度のみず」だ。桃咲カヲルは本名海東理江。理江もまた、一週間前にゾンビに遭遇したが男性ドライバーに救われる。
 新垣は生活保護申請受付をしていた。26歳である。一人で131人を担当する。
 南雲晶は今年60歳の母と寝たきりの父方の祖母92歳と父69歳と息子たちと暮らしていた。晶は19歳で結婚し、26歳で離婚した。4年たった今でも元妻の味を覚えている。手取り18万のITベンチャー企業で働き始めたとき、小説新人賞にあと一歩というところで賞を逸した。仕事をやめ、次の作品のために執筆に専念したが二次選で落ちた。
 ゾンビは体温が21度まで下がり、顔は青っぽかった。ゆっくりとしか歩けない。一度死んでからゾンビとして蘇生するか、生きながらゾンビにかまれてゾンビになるのだ。火葬されてこの世に存在しないはずのゾンビが復活するなど3つのパターンがあった。
 理江の夫もゾンビになった。自分も夫に殺されたかもしれない。人々は北海道に逃れようとフェリーの港に向かった。晶も北海道にいた。
 Kも須賀もゾンビ30〜40体に追いかけられる。Kはゾンビに肩をかまれる。Kは須賀の腕をつかむ。Kは自分がゾンビなのか、救世主なのかもわからなくなった。

脇坂副署長の長い1日 5月13日(土)
Date: 2016-12-24

おすすめ度 ★★★★

真保 裕一  集英社  発行:2016年11月

 脇坂家は父が警察官でほぼ母子家庭同然だった。由希子が実家に戻るとカップ麺は伸びている、いるはずの母も大学生の弟洋司もいない。電機はついたまま。几帳面な母が食器も洗わず留守するなんて何かあったのだろうか。午前零時過ぎだというのに。
 由希子は父に連絡すると「康明(由希子の夫)に何かあったのか」と言い、そうではないというと案の定怒鳴られる。
 由希子の夫の康明も刑事なのだ。
 その日、スクーターの転倒事故があった。運転手は見当たらない。弟は旭南病院に運ばれた。喧嘩に巻き込まれたが軽症だという。
 警官の鈴本はインフルエンザで仕事を休んで彼女の部屋にいた。その間にスクーターが盗まれた。そして事故を起こした。
 警察署ではアイドルの桐原もえみ23歳が一日署長でやってくる。署の前はファンが集まってきている。脇坂は賀江出署の副所長だ。スクーターから指紋が出る。白石正吾が少年のころから補導歴があるそれのものだった。
 白石は鈴本からスクーターを借りたという。そこへ駐車場で見つけた「署長様」と書かれた手紙があった。内容は「桐原もえみが薬をやっているという内容の手紙だった。
 桐原の車を調べると銀色の包みが出てくる。
 由希子は弟を見舞って家に戻ると母親がソファで寝ていた。起こして事情を聴くと以前に官舎で一緒だった飯塚さんのご主人を飯塚さんの妻と尾行したという。しかし、由希子の直感で飯塚ではなく、保利だと思った。そして尾行は夫ではなくその息子の保利毅彦だろう。
 9年前、羽佐間産業で火災があった。そこの社長は事故死した。9年前のファイルを鈴本が見ていた。
 署長に届いた手紙が偽手紙だと判明する。アイドルの子からは薬物は出なかった。粉は片栗粉だった。9年前の火災は社長の木辺ともみ合って、羽佐間勝孝が頭を打ち死亡した。
木辺は社長室を放火して逃げたという。
 この事件の裏には代議士の影があった。赤城警視正と山室代議士の関係がわかってくる。赤城警視正が山室代議士の選挙違反のもみ消しを白日の下に暴き出したのは若い警察官であった。
 夜中の12時を過ぎているのに、政治資金規正法違反の容疑で捜査本部を立ち上げたいと課長の申し出があった。脇坂はすぐさま警察署に向かう。
継続捜査ゼミ 4月22日(土)
Date: 2016-12-10

おすすめ度 ★★★★

今野 敏  講談社  発行:2016年10月

 安斎幸助は目黒署の組織犯罪対策課刑事で総務係所属の巡査部長だ。28歳独身だ。小早川一郎の頼みで女子大に行く。小早川はこの大学で教授をやっている。もとは安斎と同じ目黒署勤務だったが、退職後三宿女子大で准教授となり、今は教授でゼミの学生に「刑事政策演習ゼミ」別名「継続捜査ゼミ」を開いていた。
 法学部はないので人間社会部に所属している。安斎はそのゼミの手伝いだ。
 15年前の殺人事件。目黒署管内で発生した。被害者は老夫婦78歳と79歳。二人とも包丁で刺されて失血死で死亡。全品を盗まれた。昼間の3時から4時なのに目撃者はない。11月5日に起こった。
 第一発見者は林田由紀夫。当時15歳。現在は30歳ぐらいだ。被害者の孫だ。午後5時頃発見した。
 この事件についてゼミの学生たちは自分の考えを述べる。居直り強盗殺人では割に合わないという意見が出る。ゼミだけの時間では足らず、メキシコ料理の店でその続きを行った。小早川は目黒署でもう一度15年前の情報を集める。玄関のカギの記録はなかった。犯人らしき足跡は建物の方を向いていた。足跡は複数あった。通報者はその時外にいた。人通りがないと言え、目撃者がないのは不自然だ。
 小早川は大学の同僚の竹芝から相談される。実の覚えのない写真が自分の携帯に送られてきた。ホテルから女性と出てくる写真だ。SNSのメッセージで送られたという。これが公になれば職を失う可能性もある。学生とラブホテルに行ったと思われる。竹芝はホテルに行ったことはないという。
 小早川はゼミの生徒に守秘義務を前提として検討を始める。すると、写真は豪勢だと判明できた。ほどなく、いたずら目的で写真を送信したとわかる。送った相手も判明した。
 竹芝教授もその学生を罰しようと思っていない。だが理由を知りたいと思った。
 写真は自分の叔父と恵比寿で食事に行った時のもので、飲食街に何軒かラブホテルがあり、当然後ろに写りこむことがある。写真加工をするのが面白く、エスカレートしたという。小早川は冗談では済まないことがあると諭す。生徒は竹芝に謝る。
 15年前の殺人事件の方は、採取された足跡が発見者とお隣のご主人で碁の仲間のものだった。隣の人は何も気づかなかったという。隣の成瀬は殺された老夫婦に借金をしていた。犯人は成瀬だった。まさか隣人とは刑事も誰も疑わなかった。
 きっかけは成瀬に会った時の緊張感を感じ取った直感であった。


裸の華 4月21日(金)
Date: 2016-11-10

おすすめ度 ★★★

桜木 紫乃  集英社  発行:2016年6月

 ストリッパーノリカが廃業を決意した。正月公演の真っ最中、左脚を骨折した。膝から下にボルトを入れた。リハビリをした。舞台を捨て振り出しに戻ることにした。40歳である。
 札幌に行き、すすき野に近いところでニューハーフがやっていたという店を見に行き、居ぬきの物件を契約した。
 瑞穂23歳とみのり20歳の二人が不動産屋の竜崎の紹介でやって来た。瑞穂は5歳から高校までバレエをやっていたという。みのりも3歳からやっていた。
 この店で脱いで踊る店ではなく、元気が出るダンスを清潔な色気とプロの芸を見せたいと思うノリカ。タンゴを踊って見せる。ノリカは二人とも雇うことにした。日給六千円。
 ダンスシアター「NORIKA」を開店させる。ノリカは店に立った。瑞穂はかわいらしさで、みのりは不愛想でやっていく。ショーは8時と10時だった。ショーと飲み物で三千円の客が8人。不動産屋の竜崎が夜はバーテンダーとして仕事をした。バーテンダーの資格を持っていたのだ。
 昔のノリカの客小笠原が来てくれた。週刊誌のコラムに載った店の記事を見たという。小笠原はタンバリンでノリカを応援してくれた。ノリカのことがドキュメンタリー番組に取り上げられる。雇った二人はあるオーデションを受ける。そのうち瑞穂は竜崎の知人牧田画材店の牧田と一緒になり妊娠する。
 オーディションはみのりに話が回ってくる。ストリッパー役をみのりがする。みのりはノリカに相談する。ノリカはプロダクションに行くことをすすめる。
 ノリカは1年足らずで店を閉じ、前にやっていたストリップ小屋に戻る。小屋のママは喜んでくれた。拍手を受けながらノリカは舞う。再び舞台に立ったのだった。
女神 4月21日(金)
Date: 2016-10-30

おすすめ度 ★★★★

藤田 宜永  光文社  発行:2016年2月

 竹花は3年前に61歳の時、遙香29歳と知り合った。遙香は六本木で裏カジノでディラーとして働いていた。ドイツのホテルでカジノの仕事が舞い込みミュンヘンに行ってしまった。
 竹花のところに、浪速屋ロッカーというところから大きな段ボールが届けられる。荷物は着払いだ。「山本浩信さんから竹花さんに送るように頼まれていました。浪速屋ロッカー青木」と手紙が入っていた。中のバックの中に「竹花さん、荷物を預かってください。山本浩信」と竹花の名刺が入っていた。中は下着やタオル、豚の貯金箱、文庫本、地図などであった。ロッカー屋に電話してみる。十日ほどたって戻ってこなかったらあんたに送れと言われていたという。
 竹花は山本浩信の足取りを追う。生きているのか死んでいるのか。
  沼田清華は松野陽子からメールで「清華の父は山本浩信で先月大阪あいりん地区で肺結核でなくなった。清華が女優として活躍していることを自慢にしていた。遺品は探偵の竹花に連絡を取るように」という内容だった。
 清華はFANだんごという事務所に所属していた。清華は竹花に遺品の謎について知りたいと竹花に連絡する。松野陽子についても竹花に調査を依頼する。
 竹花のところに賊が入る。山本浩信のボロバックが消えていた。だが、竹花は遺品の一部をすり替えていた。
 竹花は大阪へ行き、通天閣近くの明珍探偵事務所へ行く。明珍は警察をやめて探偵をしている。大阪での調査協力を頼む。
 清平が殺される。自宅で首を絞められたようだ。そして明珍も殺される。
山本浩信の遺品の豚の貯金箱を割ってみるとガムテープで止めたビニール袋に写真で見たコインが入っていた。
 山本浩信は偽物だと知らずコインの「女神」を大切に隠していたのだ。
ヒポラテスの憂鬱 4月21日(金)
Date: 2016-10-23

おすすめ度 ★★★★★

中山 七里  祥伝社  発行:2016年9月

 アイドルの佐倉亜由美がデビュー3年でさいたまスーパーアリーナで3万6千5百人の席の会場でコンサート二曲目で亜由美は15メートル下に転げ落ち即死した。
 浦和医大法学教室の助教栂野真琴とキャシー准教授が解剖する。亜由美は16歳。妊娠8週目と推測された。相手はマネージャーの古久根誠二とDNA判断。妊娠を知って殺したか?
 ところがモニター映像からステップを踏み着地の際に5センチほどの凹がステージ上に倒れ掛かる寸前、足を踏み外してよろめきステージ端で転倒の勢いで床の上を転がり外へ投げ出されたとわかる。
 5センチの凹を、いつ、どこでつけたか。さいたま県警刑事部捜査一課古手川和也刑事はステージスタッフの小山田にせまる。小山田はしどろもどろになる。

 さいたま市緑区で3歳女児が自宅近くで遊んでいる最中に意識を失い病院に搬送される。途中で死亡が確認された。4月12日のことだ。美礼3歳。瓜生悟志、同居の瑠美27歳。同居を始めたのが10月頃。4月中だというのに30度という高温が続いていた。
 近くのパチンコ屋の監視カメラから車に乗り込んだ男女がしばらく動かない。その後10分ほどして急発進。これが2時50分。病院に電話がかかったのが10分後。自宅に到着するなり救急車を呼んだのだろう。
 4月12日午後1時〜3時、さいたま市内の気温31度。2時間も放置。3歳児でなくても脱水症状を引き起こす。
 ところが解剖すると胃の中はからっぽ。胃壁に付着していたのは黄土色の薄い欠片が数枚だった。紙だった。
 この家ではしつけのためにベランダに放置したところ、家の中に入れようとしたときに、運悪く通報されたと言い訳した。だが、近所では虐待していたと皆が知っていた。
 古手川が家の中に入る。ゴミ、弁当の空箱、衣類、液体の凝固した後、ほこりと毛髪などすさんだ生活の匂いがした。敗れたふすまに目をつける。「1週間何も与えず、わが子を餓死させ、その間は瓜生は茨木の現場にいたから、瑠美が単独でやったことだ。12日美礼の死を発見した瓜生がわざとパチンコ屋の駐車場に放置していたことにした。瑠美の提案で瓜生はあの女に振り回されたという。

 蕨市塚越で中央協会が住宅火災があった。キリスト教の新興宗教で全焼した。焼け跡から遺体一人分が出た。創立者かつ教祖の黒野イエス本名黒野光秀だ。遺体は表面がほとんど炭化して男女の区別もなかった。現場から灯油をまいたあとが見つかる。
捜査本部が疑っている。被疑者は3人。現ナンバー2となんばー2の元恋人の男。本条菜穂子は教団の事務局長。相馬定は広報部長。この二人は司法解剖に抗議していた。師父への冒涜だという。二人は甲山高志が犯人だという。甲山はだまし取られた金を奪還しようとしていたという。
捜査が進み、菜穂子は師父の首をしめたという。解剖すると脳髄が異常に少ない。大腸内部にガンが認められ肝臓がんなどあちこちに転移していた。治療歴はない。
 古手川は菜穂子の着衣から灯油の成分を検出。教祖は自ら寝室の梁を使って首をつり自殺したが、黒野が自殺したのでは教団の存続も危うい。自殺は禁忌とされていた。
 死体ごと現場を全焼させてしまえば自殺も隠ぺいできると考えたようだ。


ラストナイト 4月21日(金)
Date: 2016-10-12

おすすめ度 ★★★★★

薬丸 岳  実行之日本社  発行:2016年7月

 片桐達夫は32年前に身代金目的の誘拐事件を起こしている。片桐には妻陽子がいた。片桐の顔一面にヒョウ柄の模様の刺青が入れられている。
 菊屋というラーメン店の店主菊池正弘は夫婦二人で35年前、25歳の時に店を開店した。妻の美津代はガンで4年前に亡くなった3年前に娘の奈津子が結婚し、その夫の茂が手伝いに来ていた。そのころから片桐は店によく来てくれた。片桐は別のラーメン店で働いていた。菊屋は赤羽にあった。陽子は近くのクラブで働くホステスだった。陽子も片桐も菊屋によく来る常連だった。そして陽子と片桐は結婚し、二人で店をやろうと陽子はホステスをやめ、違う店でアルバイトでラーメン店に働きに行っていた。
 菊屋のカウンターで焼きそばをいっしょにつつきながら楽しそうに店を出そうと話していた。二人の間にはひかりという娘ができた。菊池にも奈津子が産まれていた。陽子はラーメン店が休みの時は日雇いの肉体労働もして懸命に家族を支えていた。皆がいい夫婦で良い父親でいい仲間だった。
 菊屋で片桐は喧嘩になった客を包丁で刺してしまった。相手は暴力団の下っ端で飲食店からは難癖をつけ金品をたかる男だった。幸い男の命に別状はなかった。
 片桐は初犯で相手にも非があった。刑務所に入らず済んだが、ラーメン店はクビになり陽子は子供を連れて実家に帰ってしまった。離婚した。片桐はやがて悪い連中とつるむようになった。片桐はその後顔におびただしい刺青を彫られていた。
 その直後、中学男児が誘拐され、身代金一千万円を要求される。顔の特徴から事件後数時間で片桐は逮捕される。懲役8年だった。その後も刑務所を出たり入ったりしていた。
 弁護士の中村尚が菊屋をたずねる。片桐の妻だった陽子は実家が浜松だったがどこにいるか分からない。
片桐は以前に1回だけステンレス加工所で仕事をしたが1週間と経たないうちに左手首から切断し、辞めてしまった。多額の賠償金をせしめたといううわさが流れた。
片桐は8年の計で旭川刑務所に2週間、名古屋で事件を起こし9年間岐阜の刑務所に。高松では誘拐事件で10年の刑を。5年前には徳島刑務所を出た。そして数日前に出所したばかりだ。
左手を切断した後は、仙台に向かった。仕事はなく、ホームレスをする。ドラッグストアで11万円を奪ったが、まもなく近くの交番に出頭した。
中村弁護士は浜松に陽子を訪ねた。陽子は亡くなっていた。娘ひかりは松田屋という呉服屋を営んでいる人と2年前に結婚し子供もいる。
 中村は片桐に連絡を取り、そのことを伝える。その後、ひかりは片桐に会おうと中村に連絡をする。
 ひかりは片桐に会い、陽子は14年前に亡くなったと告げる。片桐は母の病室の前で出会った男だった。ひかりと片桐は陽子の墓参をする。
 荒木は片桐と服を交換し、片桐が代わりに犯人と名乗って出たことに驚く。荒木も菊屋の常連だった。荒木の息子は死ぬ前に言葉を交わす言葉を交わすことができた。心から感謝していた。荒木はなせ片桐が自分の罪をかぶったのか疑問に感じる。
片桐の妻陽子は、覚せい剤の幻覚により5階から飛び降りた。それが梶原の仕業だと直感した。梶原は現在無期懲役中だ。片桐は居場所をつかむことは容易ではない。
最初の事件の関りが梶原だったのだ。梶原は片桐への復讐のために妻陽子を執拗狙い、復讐したのだ。片桐は刑務所入りを繰り返しながら、梶原を狙っていた。そして二人は出所した。梶原と片桐が取引する現場を荒木が見届ける。片桐の最後に見た写真は、陽子と赤ん坊の写真だ。それを見ながら片桐は逝った。荒木はひかりに会い、亡くなる前に片桐が見た写真を握らせる。




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