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2014年11月23日レクチャー&ピアノリサイタルに向けて(4) Ichiro Kaneko 2014年 8月 7日(木) 21:22
 旋法(音階)は、2音間の音程の不均質性によって性格が決まる。長音階が明るい、短音階が暗いなどの情緒変化を与えるのも、7つの音の配列が異なるからである。ジプシー音階、半音階、教会旋法などは自然に発生したものであり、全音音階を含む移調の限られた旋法などは20世紀に人工的に作られたものである。
 スクリャービンは晩年に神秘和音というものを考案し、それを中心に作曲した。これは、我々が彼の音楽を聴いて感じる自由さ、しなやかさとは裏腹に、極めて厳密な書法になっている。基本の神秘和音は、いわゆる和声のX和音に3度ずつ音を重ねるテンションをつけ、しかも半音変位させたものである。たとえば、ハ長調のXを基準に考えれば、
g b (d) f a c♯ e
である。これらは順に根音、第3音、第5音、第7音、第9音、第11音、第13音と名付けられるが、神秘和音を用いるときには、これら7つの構成音のいくつかが省略されることがある。その際、これらの構成音の優先順位は、残る順に7音以降、3音、根音、5音の順である。これが音列やモチーフ作成の基準になっている。なお、古典和声では第5音が半音上方変位、下方変位することがしばしば起こったが、スクリャービンはこの第9音を自由に変位させ、場合によっては13音を下方変位させることもあった。
 7音以降のみを使用すると、根音がある場合に比べて元の調性感は薄まるが、異名同音で読み替えると半音高い調のTの長和音と短和音が同時に鳴っている効果が現れ、これがあたかもその和音に解決しているような錯覚を与えるように作曲されている部分も多い。他にもそういった語法は数多く見受けられる。
 結果として、この7つの構成音を1オクターブの中に配列し、1音を補うと8音からなる音階ができるが、これは、半音ずつ音階全体をずらすと4回目で元と一致してしまうため、移調の限られた旋法第3番とよばれる。つまり、転調は3回しかできないのである。しかし、前述のように構成音のいくつかを取り出すことで、我々が古典的に認識している和音にあたかもアッチャッカトゥーラ(装飾音の一種)がついた和音のように聞こえたりすることにより、転調が限られているという印象を一切与えない、多用な和声表現につながっていると考えられる。

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