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良い趣味 金子一朗 2012/ 4月12日(木) 21:07
 右手のメロディーの長い音符につけられたトリルを、均質な速さで、しかも、よりによって左手の伴奏と周期を揃えて弾く演奏にたまに遭遇するが、とても違和感を感じる。これについては、F.クープランなどが、最初は遅く、そして徐々に速くしていくようにするべきだと述べているが、いくつか理由がある。トリルとは、もともとその音(基音)を強調するために付けられている。つまり、アクセント効果である。また、それがカデンツのドミナントの構成音に付けられていれば、トニックに解決する収束のニュアンスを表現しなければいけない。トリル音型は旋律ではないから、16分音符や32分音符で均質に弾いて、左手の伴奏の音型と縦の響きを揃えると、もともと作曲家が必要とした意味と一致しない。また、激しく単調であり、良い趣味でない。
 更に、鍵盤楽器では表現できないが、弦楽器や管楽器の場合、強弱や音程を自由に揺らせることができる。長い音符の場合、そういった楽器では、弱い音から徐々に大きくしたり(その後弱くすることもある)、わざと均質な音量で演奏したり、そういうことが自由にできる。しかも、そこに、トリルではなく、ビブラートを自由につけることができる。そういう自由が鍵盤楽器ではほとんど効かないのだから、トリルの表現を自在にせず、均質にすることは音楽的に違和感があると思うのは当然であろう。(続)

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