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装飾音の弾き方 金子一朗 2012/ 4月11日(水) 21:03
 多少専門的な話だが、止まらないのでしばらく続けたい。
 書かれなくても常識でなければいけない規則は、当時の文献などから身につけなければいけない。たとえば、バロック時代の作品のトリル一つとっても、数十年前の日本では何でも主音から始める人がいたが、間違いである。また、数十年前に出版された国内の楽譜で現在も出版され続けているもの、特に教育的色彩の強い楽譜の中には、まだそれを放置しているものもある。多くの場合は上接音から始めるというのが一時期の定説であったが、それも前期バロックと後期バロックでは異なる。また、トリルのついている音が、前の音からスラーでつながっている場合、経過音である場合、非和声音である場合、トリルのついている音が非和声音である場合などは例外となる場合が多い。トリルのついている声部とバスの声部または他の声部が、トリルのつけかたによっては作曲学上の禁則(並行5度、並達など)になることがあり、これも注意しなければいけない。また、トリルの2音の幅は、その調や和声によって長2度の場合と短2度の場合があるが、これについても、ほとんどの場合、楽譜には指示がなく、正しく判断しなければならない。これらのことは、正しい様式感を持った耳であれば、理論的に考えなくても正しい表現ができるのであるが、それでも、ある程度の作曲学的な知識が必要である。また、前期古典派の代表格、モーツァルトの作品では、トリルを上から弾く場合もあれば主音から弾く場合もある。ベートーヴェンの場合は中期から後期古典派なので、トリルをほとんど主音から弾く。モーツァルトの場合、そういった規則については、彼の父、レオポルド・モーツァルトが残した文献などが参考になる。(続)

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