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象徴 金子一朗 2012/ 4月10日(火) 19:24
 実は、楽譜について、バロック時代の作品に細かな指示がなく、近現代になればなるほど細かな指示が増えてくるというのが通説だが、ぼくは個人的にはあまりそう思っていない。たとえば、ベートーヴェンの悲愴ソナタの3楽章にはAllegroという指示があるが、バッハのパルティータ4番の3曲目には速度表示がないかわりにCouranteという舞曲名がついている。また、同じくパルティータ6番の3曲目にも速度表示がないが、Correnteという舞曲名がついている。しかし、CouranteもCorrenteも、バロック時代には誰もが知っている有名な舞曲のスタイルで、どちらも流麗なもので、前者はフランス様式で2拍子と3拍子が頻繁に交替する複雑なリズムの幾分ゆったりしたもの、後者はイタリア様式で3拍子の、より速い速度で流れる速いパッセージが特徴のものであることは周知であった。つまり、この舞曲名がAllegroなどの速度を表す標語やリズムや拍子の特徴をすべて表していたという点で、古典派以降と情報量はあまり変わらないと思っている。アーティキュレーションや強弱も、当時のルールを知れば、ほぼ正しいスタイルで表現できる。乱暴な言い方だが、学校の音楽の授業でAllegroの意味は習うが、CouranteやCorrenteなどの舞曲の意味(ニュアンス)も同じように習っていれば、バロック時代の作品の演奏はあまり困らないということである。もちろん、限られた授業時間ではこういったことを教えることは不可能に近いが。つまり、ぼくは、バロック時代もその後の時代も、読み方さえ知れば、楽譜の情報量はさほど変わってはいないと思っている。ただし、政治的な理由から、18世紀前半以降、こういった暗黙の了解がそうでなくなってきて、作曲家が詳しい情報を楽譜に詳しい情報を記載するようになってきたというのが通説である。(続)

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