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江戸落語 金子一朗 2012/ 4月 7日(土) 22:14
 バロック時代の作品には、強弱、アーティキュレーション、速度などの指示がほとんどなく、これらを演奏者が自分で決めなければいけない。しかし、これは勝手に決められるものではない。さまざまな過去の文献から当時の表現様式を理解し、その法則に則った形で、しかも自由に演奏しなければいけない。仮に勝手に決めると、シェイクスピアの劇を、求められていないコックニーで発音して演じたり、伝統的な江戸落語を江戸弁でなく東北弁でやるように、プッチーニのオペラをイタリア語ではなく日本語で上演するように、少なくとも様式として正しくないものにしてしまう可能性が極めて高い。しかも、楽器は当時のものと現代のピアノは全く構造も響きも異なるから、適切な変換が必要となる。
 たとえば、メヌエットという舞曲がある。詳しく述べると、ルイ14世を中心とした世界史の、広大に拡がった裾野まで議論が及ぶので略すが、他の舞曲も含め、バロック時代の舞曲は、同じ名称でも、作曲された年代や地方によって、速度やスタイルが異なる。しかし、ほとんどの場合において、楽譜には拍子と音符と休符以外の情報は記載されていない。作曲家によっては一部の音符を省略していることもあるくらいである。それでも楽譜が楽譜として成立していたのは、作曲者が楽譜に詳細な情報を記載しなくても、年代と地方と演奏者のレベルがある程度限定された当時の音楽環境においては、その様式がほぼ正確に表現されたからである。しかし、現代にその経験則は通用しない。(続)

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